試合開始後9秒での退場劇から学ぶこと

4月15日、味スタでの東京ヴェルディ対サガン鳥栖のJ2の公式試合で、試合開始後、9秒で退場者が出る、という珍しい事象が発生しました。
プロのレベルの試合では、1990年、イタリアのセリエAでの開始10秒という記録があったのですが、世界最速最短で退場者が発生した試合となりました。
エスコート・キッズの役目を果たしたのは多摩市の聖ヶ丘SCの選手たちだったので、現場で状況をご覧になった多摩市の方もいらっしゃることでしょう。
ここで簡単に状況を整理しておきます。

主審の試合開始の笛が鳴り、小さくキックオフを行ったヴェルディのFWの選手がボランチのポジションにいた菅原選手に大きくボールを下げました。

主審はヴェルディがボールを下げ、しかもフリーの状況でキープできると予想して、ハーフウェーラインを越えて、バックステップを使って視野を確保しながら鳥栖の陣内に入り、ヴェルディのビルドアップを待っていました。

菅原選手は後方のDF2人のどちらかに任せようとしたのか、意図はわかりませんが、自分の足元に来たボールを自分でキープすることなく見送りました。

ところが下げられたボールに、センターバックの2人は対応する用意が出来ていませんでした。鳥栖のFW池田選手が、このボールを見逃さず、菅原選手の横を駆け抜け、ボールに追いつきました。

あわてた菅原選手は池田選手を追いますが間に合わず、体は入れ替わり、池田選手がゴールに向かいます。GKと1対1になった状況で、菅原選手が後ろから左手で池田選手のショーツをつかみ倒しました。
競技規則・第12条退場となる反則の条項を参照して下さい。
第5項の「フリーキックまたはペナルティーキックとなる反則で、ゴールに向かっている相手競技者の決定的な得点の機会を阻止する。」という文章に合致します。直接FKで、菅原選手は退場、という判定に何ら問題はありません。
ところで、皆さんがあの飯田主審の立場だった場合、正しい判定を下すことはできたでしょうか?
飯田主審はキックオフの前に、副審および第4審と、キックオフを行っても問題ないことを確認し、さらに両腕の時計(ストップウォッチ)の作動を確認してから、キックオフの笛を吹いていました。笛を吹いたあと、ボールから目を切ることは一度もなかったわけです。ですから、次のプレーを予想して逆サイドのエリアにはいましたが、緊急事態が起こったことにすぐに気づき、長い距離を追いながらも争点から目を離すことがなかったのです。そして最も気を遣うゴール前のファウル、さらには懲戒罰に関しても正しい判定を下すことができました。
こうした機会は何百試合、何千試合に一度かもしれません。
しかし、「時計の作動の確認」をしてから「キックオフの笛を吹く」という順番を意識するだけで、大きなミスの芽を事前に摘むことができることが、図らずも今回実証されたわけです。
「滅多に起こらないから…」「〇種の世界では起きないから…」
皆さんが、選手たちにとって貴重な「ゲーム」のコントロールを任された審判員の仲間なら、こうした考え方はたった今、捨てて頂きたいものです。
「常に何かが起こっても、対応できる準備を…」
これは、指導者を兼ねておられる方なら、選手たちに常に求めているものと共通している要素だと思うのですが、いかがでしょう?